今や活動家・作家として活躍している雨宮処凛のデビュー作。イジメ、追っかけ、自殺未遂、オウム信者との出会い、右翼団体への入会と脱退、北朝鮮行き、イラク行き、等20代前半までの著者の経験を書いた自伝である。
読者のほとんどは、ここまで凄まじい経験をしたことは無いであろう。それでも、この本が多くの人の心を揺さぶってしまうのはなぜか。それは、ここまで極端でなくても、著者が経験の中で感じたことを多くの読者が感じているからではないだろうか。要は、この著者は振幅が大きいのである。全力で飛び込んで行って、全力ですっころんで、そしてそれを文章にしている。
この、文章に出来るという能力こそ、雨宮処凛が本書を世に出す過程で開花させた最大の才能である。おかしいぐらいに向こう見ずでありながら、その経験を反芻してみせる冷静な頭脳の持ち主なのである。ここが、単なる不幸自慢の「病み本」とは一線を画す所以である。
母親との関係、ビジュアル系バンドにはまる理由、リストカットをしてしまう理由、若者たちがカルト宗教にはまる理由、自身が右翼団体に依存した理由。どれも冷徹に分析しているのである。
本書の中で印象に残った文章を少しだけ引用させてもらおう。「私だけが世界の仲間外れだと思っていた。こんな世の中どうやってシラフで生きていけばいいのか、見当もつかなかった。」