『誰かの願いが叶うころ』 宇多田ヒカル

デビューした時は、自分の持っているテクニックをすべて使って歌わなくては気が済まない子供が出て来たなと思った宇多田ヒカル。そんな宇多田ヒカルがいつの間にか、女であることを認識させたのが、この曲である。
“あなたの幸せ願うほど わがままが増えてくよ”
こんなことを言われたら確実に喧嘩になりそうだが、いつの間にこんな言葉が出てくるほど人生経験を積んだのだろうか。
“自分の幸せ願うこと わがままではないでしょ”
これは、男が逃げていく言葉である。
“それならあなたを抱き寄せたい できるだけぎゅっと”
そして、最後に、
“もう一度あたなを抱き締めたい できるだけそっと”

きつく抱き締めたら、逃げてしまうような男なのだろう。だから、「できるだけそっと」。
逆に追いかけてほしかったのだろうか。多分、男はそれに気付いている。しかし、そういう女心は愛せなかったのではないだろうか。
本作は、紀里谷和明監督の映画『CASSHERN』の主題歌でもある。紀里谷和明との生活がこの作品に何らかの影を落としていることは、想像に難くない。
人生経験を積んだら、それだけ作品が生まれる。宇多田ヒカルは、芸術家である。