『男と女』 クロード・ルルーシュ 監督 アヌーク・エメ、ジャン=ルイ・トランティニャン 出演

♪ダバダバダ♪でお馴染みのフランス映画『男と女』。評者の印象に残っているシーンは、ドーヴィルの海岸で老人と犬が連れ添って歩いているところである。
アンヌが言う通り、老人と犬は歩き方まで似ている。ジャン=ルイは、そこで彫刻家ジャコメッティの話をする。彼は、“火事が起きたら、レンブラントの画と猫のうち、猫を助けるほうを選ぶ”と言ったと。
アンヌはジャン=ルイに、なぜこの話をしたのかと問う。ここに、二人の綻びが暗示されていると思うのだ。
ジャン=ルイは、この時、老人と犬のように、アンヌとヨボヨボになるまで連れ添っていこうと思い始めているのではないだろうか。そのためには、レーサーを止めても良いと。この時点ではアンヌにまだ話していないが、ジャン=ルイの妻は、自動車レースで事故にあった彼の容体を悲観して自殺しているのだ。そしてアンヌもまた、スタントマンの夫を撮影中の事故で亡くしていながら、映画の記録係の仕事を続けている。
二人はどこか似ていながら、老人と犬のように残りの人生を共に歩むことは無さそうだ。アンヌは、海岸のシーンで、ジャコメッテイは、助けた猫を逃がしてやると言ったと言う。ジャン=ルイは、アンヌを過去の記憶から解放することには成功したかもしれない。
二人は急接近し、反発し、また急接近する。映画の結末は、ハッピーエンドだろうか? 含みのある終わり方は、フランス映画らしいと言えば、らしい。