『CRAZY GONNA CRAZY』 TRF

1990年代に一世を風靡した小室サウンド。当時の小室哲哉は、既に40歳前後なのだが、若者文化を研究して、主要なオーディエンスである彼らに届く曲を作っていたとも言われる。
“真面目な自分は茶化しちゃう自分に 負けてるいつもね”
“長く清らかな道を歩いてく ついてゆくよ ずっと 夜が明けなくても きっと”
ダンスミュージックに乗せて届くのは、意外なほど真面目というか健気な言葉なのである。
“おびえる自分は余裕げな自分に 負けそう ときどき”

本当は真面目な自分なのに、そういう姿は友達には見せられない。本当は不安だらけなのに、余裕なふりをしてしまう。
当時、渋谷のセンター街で朝まで遊び惚けていた、いかにも軽薄な感じの若者たちも、清らかな何かを求めさまよっていたのかもしれない。他人には見せない彼らの気持ちを小室哲哉が言い当てたのだとしたら、それは彼の若者研究の成果だろうか?
それもあるかもしれないが、上記のような心理は、時代を越えて若者に共通するもののように思われる。
むしろ、小室哲哉が当時のオーディエンスと一体になって、ずっと言えなかった本当の気持ちを吐き出しているようにも見えるのだ。