本書の原題は、”How to Win Friends and Influence People”。「友を獲得し、人々に影響を与える」という意味だ。邦題「人を動かす」の方が本音丸出しで潔い。
この本に書かれていることを要約すれば、「人は皆かまってちゃんなので、その気持ちを満たしてあげれば仕事も人間関係も上手くいくよ」ということである。それもこれも、自分の思い通りに人を動かしてだ。
「わずかなことでもほめる」の章で、彼は、サーカスの団長が犬に芸を仕込む方法を、人間に応用するのだという。戸塚ヨットスクール方式に暴力を使っても、彼の言うように賞賛を使っても、やろうとしていることは同じだ。そんなに他者を操ろうとして、どうするのだ?
著者デール・カーネギーは、雑多な仕事を転々とした後、役者でも芽が出ず、話し方講師になったという。この本は、彼が正面から攻略できなかった人間社会に対するせめてもの復讐のように思える。「誰も私には興味を持ってくれなかった。皆自分のことで精いっぱいなのだ」そんな声が聞こえてきそうだ。
ビジネスというゲームの攻略本、人生の裏技集にすぎない代物を、こんな所でわざわざ取り上げて晒し者にするのは酷だろうか? では、友好的な態度であなたに近づき、あなたに影響を及ぼして利益を引き出そうとする輩が現れたら、こう言ってやれ(笑)。
“自由を侵害するものすべてをはねつける”(犬式『Life is Beatfull』)