『天使にキスを』 indigo la End

川谷絵音は、グノーシスだろうか? マニ教だろうか?
どちらでもいいのだが、「神が世界を作ったならなぜ悪が存在するのか」問題に心を悩ませたことがない人には、このような曲は作れないだろう。
ラブソング、しかも気まぐれな男に振り回される女の気持ちを歌ったラブソングに聞こえなくもないし、そう解釈して間違いだということもないと思うが、
“天気を軽く掴んで 双六みたいに雪降らした”
というのは、人間ではなくて、この世界を作った何者かである。

天使のような、こんなに美しい雪を降らせる神が、一方でこんなに罪深い人間を創造するとは、あまりに気まぐれではないか。
“でも愛しさと悲しみがほころびて いつか別々に歩めるように 僕らは磨き合って それが天使と悪魔になった”
善悪二元論…
曲のタイトル『天使にキスを』とは、つまり、この世の美しい側を愛でるということで間違いないだろう。
このギリギリの救いをどう感じるか。それは、聴衆に委ねられている。
グノーシスがなぜキリスト教では異端なのか、一時期世界に広がりを見せたマニ教がなぜ途絶えたのか、これも興味の尽きない話題である。