フランス映画と車たち(1) フォード・マスタング

クロード・ルルーシュ監督の『男と女』(1966年)。
この映画には、様々な車が出て来るが、主人公のジャン=ルイが子供の送り迎えに使っているのは、フランス車ではなくアメ車のフォード・マスタングである。これは、赤いオープンカーである。ジャン=ルイがテストコースでテストしているのは、フォード・GT40。
今回、映画を見返して気づいたのだが、物語の後半、モナコからドーヴィルまでジャン=ルイが運転して来たのは、白いフォード・マスタング。これは、あまりにも急いで来たので、モンテカルロ・ラリーで使用した車そのものでアンヌに会いに来た、という話なのだろうと思ったのだが、そうではないらしい。
ラリーのシーンの白いマスタングは、ゼッケン145番、その後のドーヴィルに向かうシーンのマスタングは、ゼッケン184番であった。テストコースで GT40 と並走しているのも、ゼッケン184番のマスタング。この映画に登場するフォード・マスタングは、計3台。
モンテカルロ・ラリーのシーンは、実際の競技の映像を使用したという話もあるので、別撮りした他のシーンと整合性がなくなってしまったのだろうか? 私は、今まで気づかなかったのだが、映画好きの間ではもしかしたら、よく知られた話なのだろうか?
いずれにしても、ラリーで使った車でそのままアンヌに会いに来たとは言ってないようなので、話のつながりに矛盾が生じたとは言えないが。

本稿を執筆しようと思った矢先、この映画でジャン=ルイを演じた俳優、ジャン=ルイ・トランティニャン(Jean-Louis Trintignant)が91歳で亡くなったというニュースが入って来た。謹んでご冥福をお祈りいたします。