イギリス人監督アレックス・コックスの映画『シド・アンド・ナンシー』。
映画の冒頭、シドとジョニーがロールス・ロイスを壊した後、画面に映るのは3代目ホンダ・シビックである。
シド・ヴィシャスが死亡したのが1979年、3代目シビックが発売されたのが1983年なので、時代考証的には全く合わない。映画の公開が1986年なので、3代目シビックは、映画の撮影当時かなり新しい車だったはずである。このシーンで前後に駐車してある車は、しっかりと70年代風なので、何か意図があるのだろうか? 向かいの歩道側に駐車してあるもう一台のホンダ車は、一見古めかしいので時代考証的に合っているのかと思ったのだが、これは1981年に発売された2代目アコードである。ということは、やはり時代考証の誤りだろうか?
ともあれ、3代目ホンダ・シビックは、革新的な良い車だった。デザインも本当に新しかったし、FF で3ドアという無駄のないコンセプト自体がデザインである良い例である。ゴテゴテしたところが全くなくスタイリッシュであり、間違いなく自動車の歴史に残る名車である。
1980年代は、ホンダが F1 で圧勝した時代であり、テレメトリーの導入など、革新性が奇をてらった新技術の見せびらかしではなくて勝つためのアイデアであることを実証してくれた。
映画の鬱々とした内容と比較して、このホンダ・シビックが浮いている感じがするのが面白い。