『新しい国語表記ハンドブック 第九版』三省堂編修所 編 三省堂

国語表記のための資料、主に内閣告示などを収録し、三省堂編修所が注記を付けたもの。
これらの資料の多くは、省庁の Web ページなどでダウンロードできるが、一冊の本にまとまって、さらに三省堂による解説もついているので、便利である。
常用漢字、人名用漢字、現代仮名遣い、送り仮名の付け方、表外漢字字体表などは、出版・編集に携わる人にとってはぜひ理解しておきたいことであるし、普段はうろ覚えであっても、こういう本でいつでも確認できると心強い。
ところで、国の国語施策が、当用漢字(昭和21年)、常用漢字(昭和56年版)、常用漢字(平成22年版)と新しくなるにつれて、字数は1850字、1945字、2136字と増え、その性格は「漢字使用の範囲」から「漢字使用の目安」へと緩和に向かっているのは、興味深い。
また、元は当用漢字が字体の簡略化を行い、常用漢字がそれを引き継いだのに、平成12年に答申された表外漢字字体表が基本的に康煕字典体を採用しているのは、出版・印刷業界での実態調査に基づいているとのことである。さらに、平成22年の改定で常用漢字に追加された漢字の字体については、表外漢字字体表に倣っているのも、時代の流れを感じさせる。
人名用漢字については、戸籍法という法律によって定められているところが、常用漢字表の内閣告示と異なる点である。