『SWEET 19 BLUES』 安室奈美恵

小室哲哉プロデュースの安室奈美恵の曲の中でも、セールス的には、実はそれほどでもなかったシングル『SWEET 19 BLUES』。
“いちばんとりえが何か 教えてあげなきゃならない あの子やあいつ”
“昨日はあの子が私の 明日は私があの子の 傷をいやして”
というのは、まさにSNS時代の「いいね!」押してあげなきゃならないのか?というモヤモヤにも通じる普遍的な人間関係の悩みとも言えるが、どうも安室奈美恵には似合わない気がするのだ。

安室奈美恵には、スターに特有の「影」があるが、それは、一見恵まれてるけど妙に繊細な若者どうしの人間関係に疲れてる、というようなものではなくて、もっと「こぶしが効いている」感じがするのだ。
この歌詞にあるような青春時代を送ったのは、むしろ小室哲哉のほうではないだろうか?
彼がプロデュースした他の女性シンガーとの関係とは違い、微妙に距離感のある二人の関係を見ても、自分の経験を元に当時の若者の気持ちを推し量ってみたが、いまひとつしっくり来なかったという、小室哲哉の若者研究の綻びが見えた作品と言えそうだ。
あるいは、プロデューサーの「おまえはこうなんだろ?」という暗示にかからない、安室奈美恵のどこか人を寄せ付けない独自の存在感が際立った作品とも言える。