アメリカ映画と車たち BMW

1990年代の若者を描いたアメリカ映画『リアリティ・バイツ』。
ウィノナ・ライダー演じるリレイナは大学の卒業式のスピーチで、こう言う。
「彼ら(大人たち)は、20代の私たちのなかに、BMW を買えるようになるために週80時間働くことを拒否する者がいるのを不思議に思うそうです」
これを見ると、アメリカでも BMW は、高級外車という位置づけなのだろう。
「君たちだって僕みたいに必死に働けば BMW ぐらい買えるようになるさ」こう言ったとしても、若者たちは無反応だ。若者たちのほうは、「自分たちは、そんな俗物ではない。もっと崇高な目的のためなら、一生懸命になれるのに」と思っているに違いない。これは、もちろん BMW を買うために必死に働いたことのない(もともと恵まれている)若者の発想ではある。
大人たちが思うところの、若者たちが食いつきそうな餌をチラつかせても、彼らは食いついてくれない。いつの時代も若者は大人にとって扱いづらい存在である。
それを、今の若い人は勤労意欲がないとか楽なほうばかり選んでいるというふうに大人が見てしまうのも、歴史上何度も繰り返されていることだろう。
彼らも、若い頃はヒッピーやベトナム反戦などのカウンターカルチャーをやって、その上の世代からは意味のわからない不謹慎な若者だと思われたのだから。