『ジェニースター』 ジェニーハイ

“youtuber の勝者少数派”
本当にそうだ。インターネットが自由でフラットな社会をもたらしたかと言えば、そういう面もあるかもしれないが、当初の牧歌的で楽観的な予測を信じる人はもういない。そこに出現したのは、全員参加型の憂鬱な競争社会であり、現実世界で冴えない人生を送っている人ほど、スターになるという僅かな夢に賭けている。
“ダサかった past に Good-bye-bye”
身の丈に合った慎ましい生活が出来れば、それで良い。その通りである。しかし、我々は蔑まれ、軽んじられていると思いがちだ。こんな天才が埋もれているなんて、何かの間違いだ。そんな満たされない自我が、夜空の星のように遍く存在している。

この星たちは、明るい世界では目に見えない。昼夜逆転した薄暗い部屋の画面の向こうで、見つけられるのを待っている。この成仏できない魂に救済はあるのか?
情報化時代のビジネスの勝ち組は、実に人間の心理をよく研究している。それは、仏の教えの逆を行くことだ。満たしても満たしても満たされない承認欲求は、プラットフォーマーにとっては、格好の商売のネタなのだ。成仏されたら(悟りを開かれたら)商売あがったりである。乾いた心に偽りの救済を。それが、世界的な大企業のやっていることである。
この現代人のメランコリーを夜空の星に見立てて鎮魂するジェニーハイは、天才だ。