この曲に出会ったのは、実際にあきれて物も言えない出来事があって、インターネットで「あきれて物も言えない」と検索した時だったと思う。
一般的に言って、その時の気持ちをインターネット検索したところで何にもならないのだが、この時はこの曲に出会うことが出来た。YouTube におそらく無断でアップロードされた昔の TV 映像には、謎のグルーヴに乗っかった忌野清志郎の声、仲井戸麗市の嗄れたギターサウンドがあった。そして、一瞬で好きになってしまった。
生きていれば、あきれて物も言えない場面に遭遇することは多々ある。
雑用を断ったら、「優先順位を考えて仕事をしろ」と言われたり(それはあなたにとっての優先順位であって会社にとっての優先順位ではない)、会社のシステムの欠陥を指摘したら、「そんなことは間違っててもいい」と開き直られたり、枚挙に暇がない。
“ヤマ師が 大手を振って 歩いてる世の中さ
汗だくになってやるよりも 死んでる方がまだマシだぜ”
日本語ロックの黎明期のひとつの頂点が、「あきれて物も言えない」気持ちを歌っているというのは面白い。
そう言えば、夏目漱石もこう言っていた。
“智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。”(『草枕』)