あまりにも有名なフランス映画『男と女』( Un homme et une femme )。
ジャン=ルイはアンヌとのドライブ中、どういう仕事をしているのかとアンヌに聞かれて、ジゴロのようなことをしていると答える。実際には、彼はテストパイロットの仕事をしているのだが、モテ男であることはあながち嘘ではない。これに対するアンヌの反応は、苦笑いであった。
フランス映画に恋愛テクニックを学ぶなどというのは、女性誌にありがちな企画だと思うが、あろうことか女を口説くときにモテ自慢をするジャン=ルイは、現在では典型的な「イタい」行動をしていることになるのではないだろうか。
しかし、こういう頓珍漢なことをしてしまうというのが恋をしている状態である。全て計画通りに、恋愛テクニックに則ってミッションを遂行できるのであれば、自分が本気になっていない証拠である。普段は女を手玉に取るジャン=ルイも、アンヌ相手には自分を売り込もうと焦り、不器用なアタックをしてしまう。
アンヌだって、ラリーに参加中のジャン=ルイに電報を打ったり、それを受けてジャン=ルイは祝賀会を途中で抜け出してアンヌに会いに行ってしまうのである。
この突飛な行動を冷笑する人は人生のあれやこれやを取りこぼしている。せめて、微笑んで見守ってほしいものである。