Patricia Kaas による1988年のシングル。当時としてもノスタルジックな曲調であるが、書下ろしである。
” Mon mec ” は「私の男」、” mec ” のニュアンスは「あいつ」とか「奴」とか言った感じである。” à moi ” を付けることで更に自分のものであることを強調している。
フランス語がわからない人でも ” je t’aime ” と言っている箇所は聞き取れるのではないだろうか。
この部分を前後を含めて書き出してみると、
Sa façon d’être à moi
Sans jamais dire je t’aime
C’est rien que du cinéma
直訳すると
“彼が私のものである方法
決して私のことを好きだと言わずに
映画以外のなにものでもない”
となる。つまり、彼は私に ” je t’aime ” と言わなくても私の心を捉えてしまうのだ。こんな古風な男が絵になるのは、案外、世界共通なのかもしれない。
映画以外のなにものでもない、とは映画のようにロマンチックなという意味合いもあると思うが、” cinéma ” には「大げさな」とか「芝居がかった」という意味もある。
彼がそういう演出をしたいのなら、それに乗ってみるというのも大人の嗜みではないだろうか。