『Auteuil Neuilly Passy』 Les Inconnus

Auteuil、Neuilly、Passy と言えば、パリ近郊の高級住宅街である。これは、その生活のパロディである。
” Hubert Valéry Patrick Stanislas duc de Montmorency ” という、いかにも厳つい上流階級っぽい名前や、” déjà ” の正しい発音(これで出身階級がわかるらしい)などの笑いのツボが見えるようになると中毒性があるのだが、これが笑えた時代はまだ長閑だった。
この曲が発表されたのが1991年、それから世界中で、フランスでも日本でも、格差は笑えないくらいに拡大した。

三浦展の『下流社会』が、一億総中流意識の崩壊を(上流階級を風刺するのではなく)下流を揶揄する形でしか書けなかったのは、著者の性格の問題もあるかもしれないが、没落する中流階級が自分より下を見つけることでしか自尊心を保てない心理を突いた出版社側のマーケティングの産物である。
しかし、それとて2005年、今から20年前である。
それから時代は、ピケティ著『21世紀の資本』、黄色いベスト運動、ブルシット・ジョブ、エッセンシャルワーカーというポリコレなのか皮肉なのかわからない言葉の出現と、益々笑えない白けた感じになってきた。
イケてるベンチャー企業がフードデリバリーやスキマバイトなんてことはあり得ない。あれは、富裕層の資産運用のためにベンチャーキャピタルが作り出したものである。