『そんな事より気になるの』 タブレット純

ムード歌謡研究家、マヒナスターズのメンバー、ソロ歌手、芸人と姿を変えてきたタブレット純。
この曲自体は、もう十年近く前のものになるが、タブレット純自身に近年再ブレイクの兆しがある。
“ブラウン管のあの人は ギター流しのその果てで 今はイロモノの枠にいた”
これは、タブレット純の自画像と見てよいだろう。
“そんな事より気になるの”は、誰かの思い出の中の彼の姿である。
そして、“この問題に答えがあるとしたなら”に続くのは、“そろそろ夕餉のお買い物にいかなくてはなりません”という日常生活の一場面である。
この曲は3番まであるが、3番ともきれいにこの構図をしている。

そして最後は、“思いでくべてお風呂をただ沸かしましょう”で締めくくられる。
つまり彼は、誰かからから思い出され、その尊い日常生活を生きる糧にはなるが、二つの世界は交わることがないのである。
思えば、芸能の仕事は、人並みの生活をしようとしてもなぜかうまくいかない人、日常生活に溶け込もうとしても浮いてしまう人が担うものなのかもしれない。
この曲がかように理知的なつくりをしているのは、タブレット純がムード歌謡研究家からスタートしたからではないだろうかなどと考えてみた次第である。