文学
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『小説と〈歴史的時間〉――井伏鱒二・中野重治・小林多喜二・太宰治』 金ヨンロン 世織書房
本書は、日本文学研究者による、研究の新たな方法論の試みである。著者は、これを〈歴史的時間〉と名付けているが、この理論の提出の背景には、カルチュラル・スタディーズ、ポストコロニアリズムといった方法論にお…
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『恋の蛍 山崎富栄と太宰治』 松本侑子 光文社
太宰治と心中した山崎富栄の生涯について松本侑子が書いた本。心中事件について書かれた既存の文献だけでなく、当時の新聞記事、生前の富栄と面識のあった人への取材など、実によく調べられた上で書かれている。「あ…
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『ドン・キホーテ』 セルバンテス 作 牛島信明 訳 岩波文庫、岩波書店
ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャは、面白いのか? 面白いと言えば面白いのだが、腹を抱えて笑うような面白さではない。苦いのだ。ドン・キホーテは、「正直者は馬鹿を見る」を体現したような人物である。作者のミ…
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『父と子』 ツルゲーネフ 工藤精一郎 訳 新潮文庫、新潮社
手元にある山川出版社の『倫理用語集』によれば、「ニヒリズム」という言葉は、ツルゲーネフの『父と子』で用いられて一般化したらしい。そのような先入観で、『父と子』を読み始めたものだから、どれくらい殺伐とし…