【食後の詩】

朝食の際に剥いた台湾産のアップルマンゴーを、鶏肉を漬け込むのに使ったヨーグルトの余りにぶち込む。そこにシリアルを少し加えて、パウダーシナモンを振りかける。デザートとしてはこの上ない。

ビアレッティという名の、イタリー製の蒸気機関車からゴボゴボと湯気が立ち上る。そうやって淹れたアメリカーノを啜りつつ、フォルモサから届いたそれを口に含みながら深い溜め息をつく。ああ、今宵のバターチキンは上出来であった。

お父さん、フツーのカレー作ってよ、と普段なら懇願するセガレーゼでさえ、それがナンとの取り合わせの妙であったにせよ、今夜ばかりは無言のハイファイブを返さずにはいられなかったらしい。ローリエ、鷹の爪、ホールのクローブと、シナモンスティックという、チキンカレー用のブーケガルニに必要な役者達が、この週末はたまたまその場に居合わせたに過ぎない。

(ただ拙宅のスパイスボックスの中にあっただけだ)

鶏肉は皮と余分な脂を包丁で取り除き、すり下ろした生姜とニンニクを二対一の割合で用意して、ターメリックとガラムマサラ、ヨーグルトと一緒に揉み込む。その後、チキン野郎は、三十分強におよぶ冷蔵庫でのパワーナップを課されることになる。

チキン野郎が冷蔵庫で惰眠を貪っている間、テンパリングした先程のブーケガルニに玉ねぎのみじん切りを加えて、色が透明になるまで炒める。パウダーチリとコリアンダーパウダーを振り、そこに足したのは家人の手による自家製のハリッサだ。マグレブ地域で用いられるペーストだが、勝手にインドと北アフリカを鍋の中で交易させる。生の香菜は生憎なかったものの、昨年作っておいたパクチーのペーストの残りを解凍して代用。トマト缶は酸味が強いので、たまたまお義母さんからもらった生トマトを二玉刻んだ。

そいつらを加えて炒めながら、スーパーで二割引だった生クリームを一滴も残さずドクドクと注ぐ。こうやって二百ミリリットルを一度に使い切れるのは、よい。この一言に尽きる。

チキン野郎をコールドスリープから叩き起こして常温に戻す間、鍋の中では、スパイス、トマト、生クリームが混然一体となっている。そのソースに蓋をして、弱火で煮込んでいく。チキン野郎は煮込む段階で足さないと肉が硬くなる。

よい塩梅で煮込んだソースをブレンダーで滑らかにし、ここでようやく鶏肉を足す。さらに煮込みながら、塩、醤油、味醂、砂糖、ケチャップ、トマトペーストで味を整えていく。日本の総合商社は多国との交易を成立させる。

と、ここまで読んでみて、あなたは失望するかもしれない。ローステッドオニオンを加えていれば、尚のことよかったのに、と。今日の晩、焦がし玉ねぎの野郎は、たしかに不在だった。居合わせなかったのだ。その事実をここで告白しておかねばならない。

最後に一つ、自戒を込めて記しておく。

スーパーの冷蔵コーナーの片隅で売られているナンを侮ってはいけない。バターを乗っけてオーブントースターで温める。上等だ。整った。

(味についての描写は割愛する。なぜって自分で作ってほしいから)