『アナキズム・イン・ザ・UK――壊れた英国とパンク保育士奮闘記』 ブレイディみかこ ele-king books, Pヴァイン

英国在住のブロガー・コラムニスト、ブレイディみかこのエッセイ集。ブログからの収録あり、書き下ろしありである。
内容は、働かないでエコロジーっぽいことをしてる人の話、音楽・芸能の話、英国の世相・政治の話、著者が呼ぶところの“底辺託児所”での話、などである。
評者にとって、この本は、ここ数年間で読んだ本の中でベストである。町田康ばりのPUNKな文体も良いし、WBSが「悪くて、バカで、センチメンタル」なのも良い。”This is England 88″ の “Why don’t we fucking grow up?” も良い。
元スリッツのアリ・アップを評して、「孤高に生涯を爆走すること」が「ライオット」だというくだりや、エイミー・ワインハウスを「男に負けて、そのことを歌って、人のこころを熱く溶かす太陽になる女もいる」と言っている箇所も秀逸である。少しカッコ良すぎやしないかという気もするが。
何が良いのかをもう少し述べると、それは、本書には、伊達や酔狂じゃないPUNKの精神が宿っていることだ。肩書にこだわりながら左翼っぽいことを言っているのとは違うし、ハイカラ趣味でキリスト教を語るのとも違う。とても潔いのである。

因みに、評者はUKの音楽シーンに疎く、本書を読むまでエイミー・ワインハウスを知らなかった。こちらもどうぞ。