江戸時代、天明二年(1782)に発行された同名の料理本を元に、現代の料理家が実際にその百品を作ってみたという本。
著者が断っているように、元の本には、細かい調理法が記されておらず、再現する際に補っている箇所があるということだ。また、豆腐の硬さは時代や地方によっても違いがあり、現代の豆腐で作るのに苦労した品もあるようだ。
百品の中で、意外と多くの割合を占めるのが田楽である。豆腐に串を刺して火で炙ったものであるが、江戸時代には豆腐田楽を商う有名な茶屋があったそうで、「豆腐百珍」(元の本)の口絵に、その一つである「ふちや」が描かれていたり、田楽用の炉の新製品が図入りで紹介されていたり、興味深い。
凍豆腐(高野豆腐)や飛龍頭(がんもどき)、焼豆腐なども、自家製で作ってみたら更に美味しいのだろう。
忙しい現代人にお薦めなのは、「あらかね豆腐」、「雷豆腐」、「砕き豆腐」、「豆腐麪」などの炒める料理である。
胡桃や胡椒が、江戸時代の料理で薬味として使われていること、六等級に分けられた内の最上級の「絶品」に、揚げた豆腐の油を水で流して油を切るテクニックが登場するというのも発見であった。
巻末には、著者が豆腐の故郷、中国を訪れた際(1997年頃?)の話も載っている。