『論理学をつくる』 戸田山和久 名古屋大学出版会

日本語で読める哲学系の論理学の教科書。この本から論理学を始めても理解できるように書いてある。
本書は、論理とは何か、論理学は何をするのかという問いから始まり、論理学の2つの主な方法論であるセマンティクス(意味論)とシンタクス(統語論)、それらを繋ぐ定理である完全性の証明を行っている。(2階の論理については完全性が成り立たないことが、最後のほうで言及されている。)
第IV部では、排中律の捨て方としての多値論理と直観主義論理に触れている。そして、排中律に対する疑念が決定論と自由意志、数学的プラトニズムと構成主義という哲学的な問題意識から発生したことがわかる。
ただ、哲学系で論理学をやる人にとって、ひとつの目標であることの多いゲーデルの不完全性定理については、触れていないので、それは本書を読んだ後で、別の本なり講義なりで挑んでみれば良いと思う。
評者がこの本で面白かったところは、1つで十全な真理関数、シェーファー関数(2変数の場合は、nand または nor)のところである。「お願いだから驚いて。」と書いてある。
また、バートランド・ラッセルが始めた記述理論が確定記述句を消去するやり方が、第II部の終わりに載っているが、例えば、ソール・クリプキの『名指しと必然性』を読む前には、第IV部の様相論理のセマンティクスだけでなく、これを理解しておきたい。