アルバム『浮世の夢』に収録されている『珍奇男』。
初期の作品である。残念ながら、CD では現在絶版になっているようだ。
“わたくしは珍奇男誰にも後ろ指さされず
ここまで苦労重ねて来た”
わざわざ奇をてらっているのではない。真面目にやればやるほど変人扱いされて、挙句には憐みの目で見られる存在になってしまう。
そんな辛酸をなめた経験を持つ人にしかわからない誇りがある。それは、誰にも媚びずにやって来たことである。
長い物には巻かれろ、取り敢えずやってみればいいじゃないか、おまえ評判悪いよ、なんでキミは他人と同じように出来ないのかね、等々に対する憤怒。
髪を染めているわけでもなく奇抜なメイクをしているわけでもなく、むしろ文学青年風の若き日のエレファントカシマシの放つ誰よりも縦ノリの日本語ロック。これこそ、国宝級の希少価値のある一品である。
二十歳そこそこの若者が「苦労重ねて来た」である。人生が先か芸術が先か、芸術家というのは不思議なものである。
そして、こういう曲を当人たちが大切に歌い続けているというのも嬉しい。初期には、曲の途中でアコギからエレキに持ち替えるスタイルではなくて、テレキャスター一本で弾いていた。