北野武監督の映画、『キッズ・リターン』。
評者が初めてこの映画を観た時の感想は、「たしかにここには赤裸々な青春がある。でも、それは面白いのか?」であった。
あれから四半世紀経って再び観てみると、時代を感じる描写もあった。カツアゲのシーンや成人映画のシーン、北野映画ではおなじみのヤクザ、すぐにビンタしたり頭をはたくノリなど、今となっては別世界の出来事のようである。例えば、現代のテレビで熱湯コマーシャルをやったら大問題であるように。
今回、心に刺さったのは、マサルに大阪行って勉強してこいと言われて本当に行ってしまう漫才師志望の二人組や、同僚が会社を辞めると言ったら一緒に辞めてしまう新入社員、自分からボクシングに誘ったのにシンジのほうが上手くなったと見るやすぐに辞めてしまうマサルたちのナイーブさ≒愚かさである。
何が正解かなんてわからないのだし、自分の人生の舵取りは自分でやらなければならない。それでも、他人に言われたことを気に病んでしまうような、最後のシーンでマサルが言う「俺たちみたいなバカ」の姿がここにはあった。
さて、最初に観た時の感想「それは面白いのか?」に戻って来てしまうのだが、ここで描かれる殺伐とした人生観は、突き詰めれば北野武の気質であり、それが観客のお気に召すか否かは、好みの問題である。