『たつき諒選集2 幻想』 たつき諒 飛鳥新社

「私が見た未来」が東日本大震災を予言したとして、一躍注目を浴びた漫画家、たつき諒の作品を集めて再版したもの。その三部作の二巻目は「幻想」。
70年代少女漫画風の絵面に不思議な話の組み合わせは、例えば魔夜峰央好きには、期待の持てる感じである。
読んでみると、この作者が約25年間漫画を描いて、あまり売れずに引退したのも納得できた。
「宝石物語」の“人はみな なにかを失うごとに なにかを得ている はずなのだから……”とか、「セレナ」の“あわれな少女よ―― みにくいのは おまえの心だった――”とかは、上手いこと言おうと思ったのかもしれないが、私の心の反応は「んっ?」だった。
「時計物語」に至っては、なぜそんなものを売るのかという疑問だけが残ったし、「時計幻想物語」は、なぜ時期が狂うと死ぬことになるのか、何度読んでも理解できなかった。
「竜樹諒の仕事部屋」というページによると、部屋には魔夜峰央と楳図かずおの色紙が飾ってあるので、やはり作者の志向としてはそちらなのだろう。そういう意味では、たつき諒に親近感を感じるのだが、魔夜峰央や楳図かずおの巨匠たちに比べると、いかにも詰めが甘いし、論理を超越する狂気も感じられない作品群だった。
さて、たつき諒に予知能力があるという話は、どういう結末を迎えるだろうか? 作品そのものよりも、こちらに注目を集めてしまう作家であることは間違いない。

当サイト編集長。 エンジニア、デザイナー、物書き、編集者、アマチュアギタリスト。

関連投稿

検索語を上に入力し、 Enter キーを押して検索します。キャンセルするには ESC を押してください。