曲名は、”Beatiful World”であるが、そんなに「この世は最高」という雰囲気の曲でもない。
“Beautiful boy 自分の美しさ まだ知らないの”
この beautiful boy は、どんな人なのだろうか?
“寝ても覚めても少年マンガ 夢見てばっか 自分が好きじゃないの”
自分の美しさをまだ知らないわけだから、自分のことを好きになれないのは、無理もない。
本人が気付いていない美しさを宇多田さんは発見してしまったわけですね。
“もしも願い一つだけ叶うなら 君の側で眠らせて どんな場所でもいいよ”
本作は、アニメーション映画『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』の主題歌である。ヱヴァの世界観と宇多田ヒカルの間に共鳴するものがあるのだろう。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』の主題歌「桜流し」と合わせて、私は本作を勝手に「宇多田ヒカルの中の斜陽」と呼んでいる。
“生きているのが、悲しくて仕様が無いんだよ。わびしさだの、淋しさだの、そんなゆとりのあるものでなくて、悲しいんだ。”“犠牲者の顔。貴い犠牲者。”(太宰治『斜陽』)
この「感じ」が滲み出ていないだろうか?
そして、これが日本人の琴線に触れるフォーマットだと思うと、なぜか安堵するのだ。