フランス映画と車たち(2)マトラ

ロベール・アンリコ監督の『冒険者たち』(Les Aventuriers)。
自家製のエンジンで革命を起こそうとしているローランが、テストコースで自分のマシンをテストするシーン。いかにも駄目そうな彼のマシンを走らせる前、オーバルコースを走っているのはマトラのマシンである。ローランの試走を手伝っているメカニックたちのツナギにもトラックにも“MATRA Sports”の文字が確認できる。
MATRA Sports は、1960年代から70年代にかけて活動したフランスのコンストラクターでありレーシングチームであるが、マトラという企業自体は、軍需産業から始まり、モータースポーツから撤退した後も多角化経営を続け、事業の吸収合併および売却を繰り返し、現在は電動アシスト自転車に僅かにその名を残すのみとなっているらしい。
映画のシーンの中のマトラのマシンに話を戻すと、映画の公開が1967年なので、それ以前の車ということになる。マトラが本格的にF1に参戦するのは1968年からであり、上記のマシンは、左側から一本出しされている排気管から判断しても、F3およびF2に参戦していた MS5 だろうか?
1968年からマトラがF1に投入したマシンには、自作の車体とV12エンジンのものと、車体はマトラ、エンジンはV8のフォードDFVのものが存在するが、1969年にチャンピオンを捕ったのは、DFVエンジンの車である。