『本能の力』 戸塚宏 新潮社

戸塚ヨットスクール校長の戸塚宏の著作。
この本は、彼がやって来たことを「合理化」するための屁理屈の羅列である。これこそ、彼が最も嫌うことではなかったのか?
彼の言い訳はなかなか巧妙で、その矛盾を一つ一つ指摘していったら、一冊の本が出来てしまうので、代表的な所だけ述べておこう。
「本能は悪で、理性で抑え込むものだ」というのが西欧合理主義に由来する誤りで、人間にもその他の生き物にも本来健全な本能が宿っていると言うのであれば、それはそれで、立派な見識である。しかし、彼のやっていることを見てみれば、戸塚宏自身が本能のバグった猟奇殺人犯であることがわかる(起訴内容は傷害致死だったが)。
彼は、「体罰の目的は我々の言うことに従わせること」だと明言している。その意味では、褒めて伸ばす派も体罰派も同じ土俵にいることは、デール・カーネギー『人を動かす』の所で述べておいた。
そして、戸塚ヨットスクール的なものが戸塚宏個人の発明ではないことも付け加えておこう。彼が、公文式や陰山式を勧めていることからもわかるとおり、戸塚ヨットスクールという現象は、戦後日本人の自発的な奴隷民族への成り下がりの必然的な帰結なのである。そして、連合赤軍、オウム真理教と並ぶ、戦後日本の悲惨な(死者を出したのだから)終着点の一つなのである。