『十六の墓標(上・下)』 永田洋子 彩流社

連合赤軍のリーダー永田洋子が獄中でまとめた手記。連合赤軍とその前身は同志を十四名殺害、一人は警察官に反撃されて死亡、もう一人のリーダー森恒夫は拘置所で自殺している。
この書物で気になった所を二つに絞ってみると、先ずは、連合赤軍が結成される前、革命左派のリーダー川島豪の獄中からの指導で、永田が機関紙の文章を川島の好むように書いていく場面、もう一つは、連合赤軍が山岳ベースで行なった「総括」である。
いずれも、答えは指導する側、総括を要求する側が持っているのである。指導される側、総括する側は、その答えを「自主性」を装って当てにいかなければならい。これは、まやかしの自主性以外の何物でもないのだが、学校教育における読書感想文に正解はあるのか、という問題に似ている。ビジネス界隈で耳にする「指示待ち族はいらない」にも似ている。これは、自分独自の考えを発表せよという意味ではない。上の人間が何を求めているのか考えて、先回りして動けという意味だ。
こうやって我々は、支配のされ方を学んでいる。人を支配する人は、合法・非合法、右翼・左翼、会社員・極道を問わず、この仕組みを利用している。
ただし、連合赤軍的なものが日本社会に遍く存在するからと言って、彼らがごく普通の人たちだったと言うつもりはない。職場、学校、家庭が下劣ならば、自分一人高潔を保てば良い。

当サイト編集長。 エンジニア、デザイナー、物書き、編集者、アマチュアギタリスト。

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